金足農高の女子4人、国際シンポで受賞 ヤマビル被害研究 /秋田

更新日付 11/04/2010   [ 戻る ]

◇ヤマビル被害、体当たり研究
 ◇自らをおとりに採取、審査員特別奨励賞に 温暖化で人里に活動拡大
 秋田市の金足農高生物資源科の女子生徒4人が、9月に東北大で開かれた家畜生産のための国際シンポジウムで審査員特別奨励賞を受賞した。他の参加者は研究者ばかりという本格的な研究の場で発表したテーマは「ヤマビルが畜産業に与える影響」。体当たりで研究に挑戦した肉食系ならぬ“吸血系女子”たちは「またヤマビルをテーマに研究してみたい」と意欲的だ。
 動物の血を吸うヤマビルの研究に取り組んだのは、農学博士号を持つ田中大介教諭(34)に理科の授業を受けている2年生の伊藤絵梨さん(16)▽上村わこさん(16)▽切明畑沙織さん(17)▽加藤愛咲さん(17)の4人。同校であった講話で里山の荒廃やヤマビル被害についての話を聞いて関心を持ち、田中教諭の勧めもあって09年8月ごろに調査を始めた。
 まずは五城目町などの近場の里山などでヤマビルの分布調査と採取を始めた。4人それぞれがおとりになって、互いの体にとりついたヤマビルを発見しピンセットで捕まえるというもの。切明畑さんは「いつの間にかかまれて血だらけになっていたこともある」という。とはいえ「見てる分にはかわいいところもある」と口をそろえ、今も約150匹を飼育している。
 大学教授らの調査に同行したり、里山周辺の住民などに聞き取りをするなど幅広い調査を実施。県内の観光名所にもヤマビルが増えているほか、やがて温暖化の影響などで北東北でもヤマビルの活動期間・範囲が長くなった上に「宿主のシカの増殖で里山から人里にヤマビルが広がり、家畜にも被害が出ている」と判明。岩手県の牧場での調査では、牛の放牧域とヤマビルの生息域が重なっており、牛を宿主にヤマビルがさらに増える可能性があることもわかった。
 4人は田中教諭に「この研究の成果を発表してみては」と勧められ、9月18日に東北大で開かれた家畜生産についての国際シンポジウムに参加。ただこのシンポは「一番若い発表者でも大学院生で、各国の研究者がすべて英語でやりとりする」という高度な学会だった。
 「最後の方は泣きそうになっていた(田中教諭)」発表文と資料制作を何とか終え、当日は、牛が血を吸われることとヤマビルの増殖を防ぐことが畜産分野において重要であると訴えた。資料に可愛らしいイラストも添えた高校生らしい発表で、評価も上々。女子高校生が一般的に嫌われる生物に関心を持ち研究したことから「審査員の教授に『リーチ(ヒル)ガールズ』の愛称をもらった」という。
 今回の研究を通じて、4人は「達成感があった。環境保全について関心を持てたし、ただ動物を守ればよいというものではないということもわかった」と振り返り同時に進めていた忌避剤も特許を申請した。田中教諭は「4人が地域の問題としてこの問題を授業することもできるので、地元の小中学校などにも招いていただければありがたい」と話している。(毎日新聞)