【おいしい日本 美味・安心の追求】大阪ウメビーフ

更新日付 03/11/2009   [ 戻る ]

 □しゃぶしゃぶ和ぎ(大阪市中央区)

 ■時代に合ったリサイクル

 堺市堺区にある畜産業、原野祥次さん(53)の牛舎を訪ねてみれば…。なんと約100頭いる牛たちが食べているのは、酒造メーカー、チョーヤ梅酒が梅酒に漬けたあとの梅。食べやすいように砕かれている。

 梅の香りが漂うと、牛たちは競って寄ってくる。よだれを垂らしながら食べるのである。原野さんいわく。

 「それだけ消化酵素が出るから牛にもいい。アルコールも含まれているから食欲増進は間違いないし、牛も落ち着く」

 平成11年、チョーヤ梅酒が大阪府環境農林水産総合研究所(食とみどり技術センター)に相談。漬けた梅のうち販売に適さない規格外のものについて、飼料化の試みが始まった。時代に合ったリサイクル飼料といえる。

 原野さんは通常のエサに加え、牛の成育に合わせて1頭につき1日計1〜3キロ、朝夕に分けて梅を与える。同研究所が分析したら、原野さんの牛はビタミンEが一般の牛の2倍近くあったという。しかも、ふつうのエサよりかなり安いとか。今ではほかの生産者らと「大阪ウメビーフ協議会」ができ、原野さんが会長。

 「地球環境のことを考えたら、この梅をもっと牛に食べさせたらいいのかな。しかもおいしい。一石二鳥、いや三鳥です」

 さて、3月とはいえ三寒四温、鍋が恋しい日もある。大阪市中央区の「しゃぶしゃぶ和ぎ」で、ウメビーフざんまいとはなった。お店のメニューでは「梅ビーフ」と漢字で書くが、原野さんの育てた牛の肉。しゃぶしゃぶは昼が上ロースなど。夜はサーロイン、リブロースなど部位ごとに注文できる。

 肉は細かい霜降り。しかし脂のしつこさはない。柔らかく美味。念のためにいうと、肉に梅の酸味があるわけではない。

 「融点が低くて手で持っても脂が溶ける感じですが、その脂はさらっとしています」

 副料理長の池田孝さん(41)は、この素材の魅力をそう説明してくれた。素材をよく知ろうと、調理担当者やホールのスタッフも原野さんの牛舎に見学に行ったそうである。

 もう一品、「大阪梅ビーフ石板焼き」。厚めに切った肉を卓上で焼く。やはり柔らかい。

 「しゃぶしゃぶ和ぎ」では、ウメビーフだけでなく大阪産の食材にもこだわる。鍋に入れる野菜とは別に細切りの野菜を肉で巻き、しゃぶしゃぶして食べるのがお薦めだそうだが、いずれの野菜もほぼ大阪産という。中国野菜の農薬問題もあり、みんなで相談して地場のものを使おうということになった。

 「生産者の顔が見えます。やはり安全」(池田さん)

 リサイクル、地産地消。食の現場はどんどん変わっている。

 文・河村直哉

                  



【しゃぶしゃぶ和ぎ】大阪市中央区千日前2の8の17 なんばオリエンタルホテル&ダ・オーレ2階

 ▽TEL06・6644・8281

 ▽営業時間 平日11時〜14時半、17〜23時 日曜・祝日11〜23時

 ▽大阪梅ビーフしゃぶしゃぶは昼の上ロースが1800円、夜のサーロインが3800円、リブロースが4100円など。しゃぶしゃぶには野菜やうどんなどがつく。夜はほかに大阪梅ビーフ石板焼き1250円など。
(産経新聞)